カバーストーリー

感覚器官 OFF/ON - 超感覚的映像体験展
映像や音声シグナルが絶え間なく流れ込む生活リズムの中において、身体の感覚は屡々待機状態に陥り、周囲の刺激に対する反応は次第に鈍くになってくるもので、《感覚器官 OFF/ON-超感覚的映像体験展》は観客に感覚を再起動させることを促し、映像・音声・そしてソーシャル言語が人間の知覚体験及び自己形成にどのような影響を及ぼすかを観察し、感覚がデジタル環境において、如何に拡大され、フォーマット化され、更に演算・構築されるのかを探ります。
本展では、映像、音響、インタラクティブ技術、そしてソーシャル文化といった分野を跨る8組の芸術家及び創作チームが集結します。観客は4階建ての展示ルートを進みながら、「虚実の境界 ログイン中」「感覚システム 再起動中」「感情シグナル 解読中」「アイデンティティ・モジュール 演算中」といった段階を経て、シグナルの受信、感情の表出、そして自己形成へと至るプロセスを体感することができます。
芸術家の謝昕妮様による《Here-Now-Position 過去,現在,現在》を皮切りに、本展は昭和のテレビ、CRT映像管から現代スクリーンに至るメディアの変遷を振り返り、、「見るということ・見られるということ」の関係性を改めて問い直します。感覚の再起動を促す陳昱榮様による《空間アルゴリズム-流動的な境界》では、温度・音響・風速といった環境データをリアルタイムに映像及び音に変換し、観客はその空間に身を置きながら、情報の流れが知覚を如何に形作るか体感できます。続いて、黄郁文様(空間デザイナー)及び陳凱育様(写真家)による《府中ASMR》は街路・市場・路地裏といった所で収録された実景音を通じ、最も純粋な聴覚の次元に立ち戻り、サウンドトラックを伴わない街の音風景の旅を創り出しています。観客は書類箱で構築された半閉鎖的な空間で静かに耳を澄まし、まるで街及び身体に属する音響のアーカイブを捲るように日常の音と再び結びつくことができます。最後に、呉修銘様の《虹の舞台》では、観客の音声データをプログラムで解析し、その音を動的な色彩映像へと変換し、発声の度に専属のビジュアルシーンを生成させています。
ソーシャルメディアの文脈においては、感情は絵文字、ミーム、ステッカーといった視覚言語へと素早く変換されています。本展の作品《ソーシャル語彙遊戯場》では、これらのイメージ言語の多様性及び制約をインタラクティブなゲームとして提示しています。アニメーションデザイナーの林立様の《Emo集》はemoji絵文字を語彙素材とし、ジグソーパズルのような未来の言語世界を創造し、感情とコミュニケーションが脱文字化・多様化する視覚時代へと移行している姿が象徴されています。
本展はソーシャルプラットフォーム及びアルゴリズムがアイデンティティ形成に如何に関与しているかに焦点を当てて締めくくられています。陽春麺研究舎の《Internet-Labeling me》は芸術家の自撮り写真及びこれまでの検索履歴を公開展示し、観客がタグ付けに参加することにより、デジタル時代において、「私」がどのように定義され、単純化されているかを考察することができます。呉修銘様の《C9-3オーディション館》はAndy Warholのオーディションの概念を参照し、観客が自由に舞台に上がれる仮想空間を構築し、音声及び映像が即時演算され、アイデンティティの姿を生成するデジタル環境における多重性と変動性を浮かび上がらせます。
《感覚器官 OFF/ON-超感覚的映像体験展》はデジタル感覚に関する深層経験の旅を構築します。日常的にシグナルに包囲される現在において、本展は感覚を一時的に「再起動」させる場を提供し、感覚・感情・アイデンティティを新たな認識及び思考を喚起する契機を与えます。
展覧会期間中には週末イベントも多数開催され、デジタル文化及び現代芸術に関心を持つ皆様のご来場をお待ちしております。府中15では、感覚の扉を開き、映像と音声が織りなす多重の現場へようこそ。
感覚器官 OFF/ON - 超感覚的映像体験展
10/03-2026/03/01
府中15
02-2968-3600
www.fuzhong15.ntpc.gov.tw